2014年6月22日日曜日

不安を口に出せない空気を憂う


我が家では一昨年から夏休みや連休の時期に福島県の親子の方々をホームステイにお招きしています。

その中で、昨年10月に来た小学3年の女の子とお母さんと一緒に外食を

していたときのこと。目の前に座っていた女の子が突然バーっと鼻血を出し始めたのです。あわてて拭きましたが、間に合わずテーブルも汚れました。ティッシュをかき集め、他のお客さんや店の人の目にふれないよう、処理しましたがあわてた私に比べお母さんは落ち着いていました。

「原発事故が起こってから鼻血はよく出すんです。」ということでした。

まもなく出血は止まりました。そのお子さんは福島市に住んでいます。

別の福島県在住のお母さんは「福島では周囲の反応が怖くて鼻血が出たとは言えない」と言っています。

放射線医学の専門家は放射能の低線量被曝と鼻血との科学的因果関係は明らかではないと言います。個人差が大きいこともあるでしょう。

スピリッツ誌が漫画「美味しんぼ」の休載を報じました。ひとつの漫画に対して多方面からの抗議や批判は過剰ともいえるものでした。

 しかし今、心配なのは「鼻血が出る」とおおっぴらに言えないような空気が福島県を支配しているらしいことです。不安を口に出して言えないことは不安をますます募らせ、症状に苦しむ親子を孤立させていくのではないかと心を痛めます。
(2014.5.23 朝日新聞「声」欄掲載の原文)
 

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